感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
びまん性汎細気管支炎に対するTE-031長期投与の検討
武田 博明三浦 洋川平 昌秀小林 宏行小友 進中池 司郎
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 63 巻 1 号 p. 71-78

詳細
抄録

びまん性汎細気管支炎 (diffuse panbronchiolitis, 以下DPB) 12例 (検出菌: H. influenzae 5 例, P.aeruginosa4例, B.catarrhalis1例) に対し, 新しいマクロライド系抗生物質であるTE-031を長期 (6ヵ月) 投与し, その臨床像の観察を行い, さらに若干の基礎的検討を加えた.
臨床的には全例に, 症状, 諸検査の改善が得られ, 細菌学的にもH.influenzae, B.catarrhalisは除菌された.またP.aeruginosaは4例中2例消失, 1例減少がみられたが残りの1例は不変であった.しかし, この細菌学的に不変であった例においても, 症状に改善がみられた.なお菌交代症はみられなかった.
長期投与中副作用はみられなかった.
基礎的検討として, DPB症例の呼吸器親和ウイルス抗体価の検討を行ったが, パラインフルエンザウイルスIII型, およびII型において高titerを示す例が高頻度にみられ, 本症の進展にウイルス感染の関与が十分に考えられた.
このDPBの進展という立場から, 生体防御機構という観点にたってNK活性を検討してみると, DPBでは健常コントロールに比し高く, TE-031長期投与例ではさらに高かった.
以上の成績から, TE-031はNK活性を高めることにより, 非特異的防御機構の充進がもたらされ, DPBの進展に関与するウイルス感染を防御し, 結果として, 細菌の二次的なcolonizationが抑制されることが, 本症の予後を安定的に好転化するものと考えられた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top