感染症学雑誌
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感染症に対するリポソーム封入抗生剤の治療効果
3. 実験的深在性カンジダ症におけるリポソーム封入アムホテリシンBの治療効果の検討
笹原 武志
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1989 年 63 巻 12 号 p. 1301-1307

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抄録

マウスにおける実験的深在性カンジダ症の治療にリボソームに封入したアムホテリシンBを用い, その治療効果について検討を行なった.
Candida albioansを静脈内感染させた場合, その感染に対する感受性の違いが, マウス系統間で認められた. BALB/C系マウスについて生体内での本菌の動態を調べてみると, 肺臓と心血においても菌の増加は僅か認められたものの, 主たる増殖の場は腎臓であり, 発死直前には生菌数にして約106個/gに達した.
アムホテリシンBをリボソームに封入することによって, アムホテリシンBが本来持っているアナフィラキシー様のショック死といった急性毒性や腎機能障害などの亜急性毒性の成立を迎えることが出来た. その結果, 4mg/kgのリボソーム封入アムホテリシンBを1回投与するだけで, 腎臓内におけるC. albicansの増殖が強く抑制され, マウスの死期も延長することが分かった. 以上の成績から, アムホテリシンBによる深在性カンジダ症の治療にリボソームを薬剤運搬体 (drugdeliverysystem) として応用することによって, 本剤の抗真菌効果を著しく向上させ得ることが示唆された.

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