感染症学雑誌
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腸結核および結核性胸膜炎を呈したダウン症候群の小児例
吉田 直隆高橋 由利子森 雅亮斉藤 和代横田 俊平松山 秀介杉田 昭
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1989 年 63 巻 12 号 p. 1333-1337

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抄録

腸結核および結核性胸膜炎に罹患したダウン症候群の13歳女児例を報告した. 患児は昭和62年に急性大腸炎に罹患し, 治療で一時改善したが食欲不振が続き, 著明な体重減少を認めていた. 昭和63年4月の学校検診でツ反強陽性と胸部異常所見より結核が疑われ当科を受診し, 結核性胸膜炎と腸結核の疑いで入院となった. 入院後, SM, INH, RFPの3者併用療法により, 約5ヵ月間の入院期間を要したが, 胸部所見および消化器症状は改善した. 腸結核は, 回盲部における潰瘍病変, 組織標本の肉芽腫で診断した. 穿孔や瘻孔は認められず, 外科的な手術適応はなかった. 腸結核の発症は入院約1年前の急性大腸炎と考えられ, 原因不明の大腸炎, 特に限局性腸炎では鑑別診断として結核を考える重要性が痛感された. さらにダウン症候群を含め免疫不全状態が考えられる症例では, 腸結核をはじめとする肺外結核に留意する必要があると考えられた.

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