感染症学雑誌
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腸チフス・パラチフス患者の調査成績 (1984年~1987年)
村田 三紗子増田 剛太辻 正周根岸 昌功
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1991 年 65 巻 6 号 p. 710-717

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抄録

1984年~1987年に, 指定都市立14伝染病院に入院した腸チフス・パラチフスA患者について各年に行った臨床実態調査を総括し, 疫学的・臨床的に検討した. 総患者数は, 腸チフス183名, パラチフス49名であり, 年次ごとに減少傾向が認められれる一方, 外国感染例は, 腸チフス81例 (44.3%), パラチフス35例 (71.4%) を占め, その比率は漸増している. 患者は20歳代~30歳代および男性が多かった. 腸チフス176例 (96.2%), パラチフス49例 (100.0%) は細菌学的に診断され, 発症から14日前後に診断された症例が多かったが, 29日以上を要した症例も10%以上に認められた. 高熱, 徐脈, バラ疹, 肝・脾腫, 白血球減少, 血清GOT・GPT・LDHの上昇などに注目し, 抗菌剤使用前に血液/糞便の細菌培養を行うことによって, 腸チフス・パラチフスの診断は容易に得られることを強調したい. 腸出血は腸チフス23例 (12.6%), パラチフス4例 (8.2%), 腸穿孔は腸チフス2例 (1.1%) に認められ, 腸チフス1例 (0.5%) が死亡した. 化学療法は, CPが最も多く用いられた. 化学療法終了後3週間以上追跡された症例について, 再排菌は腸チフス7/127例 (5.5%), パラチフス6/46例 (13.0%) に認められたが, 再度の治療によって完全に除菌された. 1986年に, CP・ABPC・KM・SMの4剤に耐性を示すS. typhi 1株が外国感染例から分離された. OFLX等の使用経験から, ニューキノロン系薬剤は本疾患の治療薬として十分に期待できると思われた.

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