感染症学雑誌
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岐阜県における恙虫病の研究
第5報標準株に対するモノクロナール抗体の性状と分離株の分類への応用
山下 照夫粕谷 志郎長野 功大友 弘士
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1992 年 66 巻 9 号 p. 1262-1269

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抄録

惹虫病リケッチア標準株のKarp, KatoおよびGilliam株に対する8つのモノクロナール抗体 (MAbs) の性状を調べ, 惹虫病患者由来17株に対する反応性を間接蛍光抗体 (IF) 法で比較した. IF法で標準3株の共通抗原を認識したMAbsKp/1F11, Kp/C6, Kt/3B2, Kp/1C10およびKt/3C2は, 免疫プロッティング法で各々46~47kDa, 46~47kDa, 60kDa, 110kDaおよび54~56kDa蛋白と反応した. Kt/3C2は54~56kDa蛋白以外に数本のバンドと反応し中和活性も認められた. 標準3株の共通抗原を認識する上記5つのMAbsのIF法での反応性から, 岐阜県の患者から分離された14株は4グループに型別された. GJ-1株を代表とする4株は美濃地方北部から検出され, 5つのMAbsと良く反応した. KN. 2株を代表とする7株は美濃地方西部と東部で検出され, Kt/3C2と反応しない点でGJ-1株と区別された. KN-1株を代表とする2株は美濃地方東部から検出され, Kp/1C10とKt/3C2に反応しない株であった. 唯一有毛マウスに致死性のKN-3株は可児市で検出され, Kp/1F11, Kp/C6およびKt/3B2と反応性が弱い点で上記3グループと区別された. Kawasaki株とKuroki株は, 各々KN-1株とGJ-1株と同一の反応性を示した. Shimokoshi株はKt/3B2, Kp/1C10およびKt/3C2とほとんど反応せず, 岐阜県の分離株と異なっていた. わが国で流行している慈虫病リケッチアの抗原性は, 研究の進展に従いその多様性が明らかになっていくと考えられた.

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