感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
Cefaclor使用に伴う上咽頭検出菌の変化
冨山 道夫関根 理樋口 興三
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 67 巻 4 号 p. 305-310

詳細
抄録

初診時の上咽頭細菌検査で有意の量の病原菌を検出した小児耳鼻咽頭感染症症例で, 急性炎症症状の改善までに2週間のcefaclor (CCL) 使用を要した45名を対象として, 使用後1週目と2週目に上咽頭細菌検査を行い, 上咽頭病原菌の菌種と菌量の変化およびMICの推移について検討した。初診時の検出菌はHaemophilus influenzae40株, Staphylococcus aureus 3株, Streptococcus pyogenes 5株, Stnptococcuspneumoniae1株計49株であった。CCL使用後の病原菌残存例は29名でその内訳は菌量不変12名, 菌量減少14名, 菌交代3名であり, 菌交代例のCCL使用前の検出菌はS. aureus1名, S. pyogenes 2名でいずれもH. inflnenzaeに交代した。初診時より2週目までH. influenzaeを検出した症例は26名で, H. influenzaeの菌消失例14名と初診時の薬剤感受性率を比較したが両者の間に有意差はなかった。病原菌残存例はすべてH. influenzaeであり, CCL使用前後にH. influenzaeが検出された症例26名中5名にMICの変動を認めた。MIC上昇例2名は3.13μg/ml以下の感受性株より25.0μg/ml以上の耐性株に推移した。MIC下降例2名は逆に12.5μg/ml以上の耐性株より3.13μg/mlの感受性株に推移し, その他1名は3.13μg/mlより25.0μg/mlに上昇した後に3.13μg/mlに下降した。このようにMICが変動する機序として耐性株のselection, 耐性株の増殖力低下, host側の感染防御能の関与を想定した。

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top