感染症学雑誌
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猫ひっかき病の基礎資料としてのネコによるヒトの受傷状況-第1報
荒島 康友熊坂 一成河野 均也池田 忠生宗村 徹也浅野 隆司保刈 成男高木 朗
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1994 年 68 巻 6 号 p. 734-739

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抄録

1992年10月から1993年3月までの5ヵ月間に, ネコによる人の受傷状況についてアンケート調査を行い検討を加えた. 対象として, 獣医師, 獣医看護士, 学生, 一般人, 計1,619人 (男性652人, 女性967人) を用いた. また, 本邦における論文調査も合わせて行った.
ネコによる受傷率: 獣医師, 獣医看護士, 獣医学科学生, 獣医看護士学生は, 一般人より有意に高率であった. ネコ飼育者は非飼育者より有意に高率であり, その90%以上は自分のペットによるものであった. 獣医師, 獣医看護士では職業的な状況での受傷がほとんどであり, その他のグループとは受傷状況に明瞭な差が認められた.
CSDの疑われた者は33人であり, 獣医師102人中19人, 獣医看護士45人中4人, 獣医学科学生517人中2人, VT学生400人中1人, 一般人555人中7人であった.
本邦におけるCSDの論文数は, 1953年より1992年3月までの約40年間に論文数71報, 症例数81例であった. 最近10年間では47報 (約66%) と, 著しい増加傾向が認められた. また, 好発年齢は外国と同様に低年齢層であった.
一般人では, 掻傷によりCSDと疑われる状態になった者が7人中4人に確認されたことから, 家庭におけるネコの爪切りを行うことで, 受傷を防止できると思われた. 獣医師ではほとんどが咬傷によるもので, 防止は難しいと思われた. さらに, 全ての分野の人を対象に, CSDをはじめとするZoonosisについての衛生教育, および, ペットの性格, 精神面, を考慮した取扱方法を指導することも重要と思われた.

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