1994 年 68 巻 6 号 p. 744-750
1992年10月以降, インドおよびバングラデシュで大流行しているコレラ様疾患の原因菌Vibriockolerae O139 (Synonym Bengal) の河川水における残存性を試験した. 本菌およびγ-ckoleraeOIElTor, Vibriockolerae non-O1を供試して行い, それぞれのおよそ106CFU/mlを河川水等の検水に接種した後それを5℃ および20℃ に静置し, 1日-5日後, 7日後, 14日後, 21日後に残存菌数を測定した. 本実験でのV. ckolerae O139の残存性はV. ckolem O1およびnon-01と同様の傾向を示し, その残存期間は保持温度による差異が認められ, 河川水中の菌数は20℃ においては7日後に, また5℃ においては14日後におよそ102CFU/ml以下に減少した. 一方, 同じ河川水のろ過滅菌水を検水とした場合では, いずれの供試菌ともに河川水における場合と比較して長い残存期間を示し, その差は顕著であった.このことから河川水のV. ckoleraeの残存性は, 夏期よりも冬期において高いものと推測され, それは河川の汚濁状況に左右されると考えられた. 今後, わが国の河川がV. cholerae O139による継続的汚染を受ける状況が発生すれば, 汚染の量的要因によって, その分布は現在のわが国におけるV. ckolerae O1あるいはnon-O1と同様の形態になるものと思われる.