感染症学雑誌
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Pneumocystis carinii肺炎の早期診断におけるPolymerase chain reaction (PCR) 法の有用性に関する研究
伊志嶺 朝彦仲本 敦比嘉 太小出 道夫稲留 潤川上 和義普久原 浩草野 展周橘川 桂三斎藤 厚
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1994 年 68 巻 6 号 p. 751-758

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抄録

Pneumocystis carinii (P. carinii) 肺炎の早期診断におけるPolymerase chain reaction (PCR) 法の有用性を主としてToluidineblue-O (TBO) 染色法と比較して検討した.
一般細菌および真菌を用いた検討では本PCR法はPCを特異的に検討した. Rat由来のP. carinii虫体を用いて検討した検出限界では, TBO染色法にて7.8×103シスト/ml, PCR法にて78シスト/mlとPCR法が100倍感度が優れていた.
臨床検体による検討ではP. carinii肺炎確診例10症例, Pcarinii肺炎疑診例8症例, 他の肺疾患26症例を対象とした.各検査法における感度はTBO染色が喀疾13%, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 80%, 経気管支的肺生検 (TBLB) 75%であったのに対してPCR法では喀疾100%, BALF100%であった. またTBO染色法と比較した場合のPCR法の特異度は95%であった.
このように, 本法は喀疾を検体にした場合においてもその感度はすぐれており, 安全且つ簡便に繰り返し採取可能な喀疾を用いてのP. carinii肺炎の治療効果判定やハイリスク患者を対象としたスクリーニング検査に応用できるものと考えられた.

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