感染症学雑誌
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細菌バイオフィルム解析法としてのATP測定の意義
竹中 皇
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1994 年 68 巻 6 号 p. 759-766

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抄録

細菌バイオフィルムのbio-activityの解析を行うために, バイオフィルムのATP量をATPbioluminescence法によって測定した. ATP量と浮遊系の緑膿菌の菌数との間には直線関係が認められた. Modified Robbins device (MRD) を用いてin vitro実験系を設定した. 緑膿菌バイオフィルムは, MRDを人工尿で灌流させて, シリコンディスク表面に形成させた.
この緑膿菌バイオフィルムのbio-activityをATP bioluminescence 法で測定したところ, bioactivityは灌流開始4時間までは急速に増加し, 以後灌流開始後32時間まで定常状態を維持していた. 緑膿菌バイオフィルム形成後, 灌流液を piperacillin, clarythromycin, およびofloxacinを含む人工尿に交換して, 薬剤を8時間作用させた. その結果, 緑膿菌バイオフィルムのbio-activityは, 抗菌剤の作用により変化し, その変化はATPの測定によりとらえることができた. 今回検討したATP量の変化は走査型電子顕微鏡所見とよく一致していた.
以上の成績より, 細菌バイオフィルムのATP量測定は, in vitro実, 験系における細菌バイオフィルムのbio-activity解析に有用であると考えられた.

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