感染症学雑誌
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肺気腫症例の喀痰から分離される病原細菌
渡辺 憲太朗有冨 貴道豊島 秀夫千手 昭司吉田 稔
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1995 年 69 巻 11 号 p. 1251-1259

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抄録

過去約10年間に当科に入院した全ての肺気腫症患者の入院時に喀痰から証明される病原細菌を, 年度別, 年齢別, 肺活量 (VC) や1秒量 (FEV1.0), 動脈血酸素分圧 (PaO2), 炭酸ガス分圧 (PaCO2) などの呼吸機能別に検討した.その結果以下の結論を得た.MSSAやE. feecalis, E. cloacae, X. maltophiliaなどが喀痰から検出される群の肺活量や1秒量はS. pneumoniaeB. catarrhalis, H. influenzaeが検出される群に比して低値であった.またPaO2やPaCO2を検討した結果においてもMSSA, E.faecalis, X. maltophiliaなどが検出された群のPaO2は低く, PaCO2は高い傾向にあった.その他Acinetobacter, E. coli, P. aeruginosaなどが検出された群の呼吸機能のパラメーターもS. pneumoniaeB. catarrhalis, H. influenzaeなどが検出された群に比して低下傾向があった.これらのことは肺気腫症の進行すなわち呼吸機能の悪化ともに検出される病原細菌がS. pneumoniaeB. catarrhalis, H.influenzaeなどから, P.aeruginosaなどのグラム陰性菌のみならず, MSSAやE. faecalisなどのグラム陽性球菌に変化することを示すものである.肺気腫の進行の予防や急性増悪時の抗生物質治療においてこれらの事実に留意しなければならないことを示唆している.

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