感染症学雑誌
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老人病棟における院内感染対策継続中の胃液および腸管内細菌叢
上気道MRSA定着の有無による比較検討
真崎 宏則吉嶺 裕之中西 俊裕宮田 佳奈出川 聡高橋 秀彦黒木 麗喜井口 和幸森本 浩之輔貝田 繁雄松本 慶蔵力富 直人田尾 操渡辺 貴和雄永武 毅
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1995 年 69 巻 11 号 p. 1260-1268

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抄録

当院内科老人病棟においてMRSAが各種感染症の起炎菌として増加したため, 1991年10月より気道, 褥瘡および環境に重点を置いた本格的院内感染防止対策を開始し現在も継続している.対策の継続により菌血症および院内肺炎が明らかに減少しているが, 老人病棟におけるMRSA保菌 (定着) 者の院内発生は依然として月に数名みられ, 上記以外でMRSAが定着しやすい部位を明らかにする必要性を感じた.
今回対策継続中の1993年12月から1994年6月までに老人病棟入院患者で原則として化学療法が行われていない時期の胃液および腸管内細菌叢を調査し, 上気道におけるMRSA定着の有無と胃腸管内細菌叢におけるMRSA定着の関係について検討を試みた.
MRSAはMRSA保菌者群 (胃液定量培養施行10例14回) において1回のみ (7.1%) 検出されたが, MRSA非保菌者群 (胃液定量培養施行8例10回) では全く検出されなかった.腸管内細菌叢は, MRSA保菌者群 (便定量培養施行22例38回) およびMRSA非保菌者群 (便定量培養施行21例25回) でMRSAは1回も検出されなかった.今回の検討から化学療法が行われていない老人病棟入院患者の便を介したMRSAの院内汚染, 院内伝播の可能性はかなり低いものと推察された.

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