感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
経時的に採取したHIV-1感染者血漿中の逆転写酵素阻止抗体に関する検討
斎藤 隆行鈴木 一雄伊藤 章林 孝子渡邉 寿美近藤 真規子今井 光信
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 69 巻 8 号 p. 851-857

詳細
抄録

ポリA固相化マイクロタイタープレートを用いた非放射性逆転写酵素活性測定法により, 経時的に採取したHIV-1抗体陽性者血漿中の逆転写酵素 (RT) 阻止抗体の測定を行った.
経過観察期間中無症候キャリアー (AC) のままであった6例とACからAIDSへと移行した3例から, 29カ月~51カ月の間に経時的に採取した血漿について, HTLV-IIIB株のRT活性に対する阻止反応によりRT阻止抗体を測定し, その推移を追跡した.
AC例6例中5例では, 経過期間中 (45~51カ月) の段階希釈した血漿のHTLV-IIIBのRT活性に対する阻止率およびRT活性を50%阻止する血漿の希釈倍数にほとんど変動はみられなかった. また, これら5例は患者末梢血単核球 (PBMC) からのHIV分離, 血中HIV p24抗原ともにすべて陰性であった. しかし, AC例046の血漿では, 48カ月の経過期間中にRT活性阻止率および50%阻止希釈倍数はともに徐々に低下していった. この例では, 血中HIVp24抗原は陰性のままであったが, 経過追跡開始から27カ月目より患者PBMCからHIVが分離できるようになった. 一方, ACからAIDSへと移行した3例の血漿では, いずれも経過期間中 (29~35カ月) 臨床症状の発現あるいはHIV分離成功に並行して, RT活性阻止率および50%阻止希釈倍数が徐々に低下していた. これらの結果より, RT阻止抗体のレベルは, HIV感染者の病態をよく反映しているものと思われた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
次の記事
feedback
Top