感染症学雑誌
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劇症型A群溶連菌によるToxic Shock-Like Syndrome 6例の臨床的検討
石田 直松井 保憲武田 修明田中 陸男藤井 寛之本郷 俊治
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1995 年 69 巻 8 号 p. 873-877

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抄録

劇症型A群溶血性連鎖球菌によるtoxic shock-like syndrome (TSLS) は, 突発的な循環不全で発症し, 急速に多臓器不全を呈する疾患であり, 近年その報告が増加している. 当院において, 1977年より1994年までにA群溶連菌を検出した症例をreviewし, TSLSの診断基準に合致すると思われた症例を6例経験したのでその臨床経過を報告した. いずれの症例も感冒様症状を前駆症状とし, 短期間でショックや多臓器不全を呈した. 6例中3例は電撃的な経過をとって死亡し, 3例は救命しえた. 救命できた例については, 早期の抗生剤治療および抗DIC治療が有効であったと思われた. A群溶連菌は5例で血液から, 1例で腹水から, 1例で壊死組織より検出された. 検出菌の血清型は3例でTlM1型, 1例でT8型, 1例でT28型であった. 毒素型は4例でB型, 1例でB+C型であった. 本邦では1992年以前にTSLSの報告はほとんど認められていないが, それ以前にも潜在的に起こっていた可能性が考えられ, 決して稀な疾患ではなく臨床医が常に認識すべき疾患であると考えられた.

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