感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
Streptococcus milleriによる感染症の8例
血清抗体価測定の意義およびStreptococcus pneumoniaeによる呼吸器感染症との患者背景および発症要因の比較
木村 丹松島 敏春田野 吉彦小橋 吉博矢野 達俊中村 淳一米山 浩英
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 69 巻 8 号 p. 884-889

詳細
抄録

過去4年間に当科に入院したStreptococcus milleri (以下S. milleri) による感染症8例の臨床的検討を行った. また併せて, S. milleri感染症とStmptococcus pneumoniae (以下S. pneumoniae) を原因菌とした呼吸器感染症の患者背景および発症要因について比較検討した. S. milleri感染症の年齢は21から81歳まで (平均62.0), 性別は男性6例, 女性2例であった. 感染症の内訳は, 膿胸3例, ほかに膿胸+肺膿瘍, 胸膜炎, 肺気腫の二次感染, 気管切開部の皮膚感染, 硬膜下膿瘍+脳膿瘍各1例で, 8例中6例が膿を形成するものであった. 基礎疾患は7例に存在し, そのうち5例はperformancestatusに影響を及ぼしていた. 琉球大学第一内科に依頼した6例の血清抗体価の測定値は, S. millerigroupのうちSanginosus3例, S. intermedius 2例, S. constellatus 1例に対して×1,024または×2,048の高値を呈していた. S. milleriによる感染症の診断のためには血清抗体価の測定が有用であると考えられた. Smilleri感染症とS. pneumoniae感染症の患者背景および発症要因の比較では, 年齢はS. pneumoniae群 (P群) がやや高齢であったが, 基礎疾患はS. milleri群 (M群) に多く存在し, 喫煙習慣もM群で多くみられた. また栄養状態を表わすhemoglobinおよびalbumin値はM群で低く, 細胞性免疫を示すツベルクリン反応はM群で陰性または疑陽性を呈した割合が高かった. S. milleri感染症は, S. pneumoniae感染症に比較して, 基礎疾患を有し喫煙習慣がある患者, 栄養状態や細胞性免疫が低下した際に発症し易く, 膿瘍を形成することが特徴のように考えられた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top