感染症学雑誌
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海外旅行者下痢症由来腸炎ビブリオのtrh遺伝子保有状況と保有株の性状
尾畑 浩魅甲斐 明美関口 恭子松下 秀山田 澄夫伊藤 武太田 建爾工藤 泰雄
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1996 年 70 巻 8 号 p. 815-820

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抄録

1989~1995年の7年間に海外旅行者から分離された腸炎ビブリオ478株について, RPLA法で神奈川溶血毒産生性を検討した結果, 108株が`弱または非'産生であった.これら108株を対象に, PCR法でtrh及びtdh遺伝子保有状況を調べた結果, 98株 (90.7%) がtrh遺伝子を保有していた.その内, 03: K6 (6株) など13種類の血清型菌35株はtrh遺伝子単独保有, 01: K69 (14株), 03: K72 (8株), 06: K46 (7株) など17種類の血清型菌63株はtrhtdhの両毒素遺伝子を保有していた.また, 01: K56, 01: KUT, O3: KUT, O5: KUTの4種類の血清型菌では, trh遺伝子単独保有株と, trhtdhの両毒素遺伝子保有株の両者が認められた.
これらtrh遺伝子を保有している98株について生化学的性状を検討した結果, その全てがウレアーゼ産生の非定型的性状を示した.また, 06: K18の4株のみがズルシトール発酵, 01: K1の5株のみがインドール非産生の非定型的性状であった.一方, 神奈川溶血毒強産生性の370株は, 全株がウレアーゼ非産生の定型的性状を示した.

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