感染症学雑誌
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70 巻, 8 号
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  • 第1報: 原因菌の解析
    佐藤 達也, 和田 靖之, 岡崎 実, 小林 信一, 岡部 信彦, 衛藤 義勝, 久保 政勝, 前川 喜平
    1996 年 70 巻 8 号 p. 775-783
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1975年から1994年の20年間に慈恵医大付属病院に入院し, 血液培養にて菌の検出がなされ臨床的に敗血症と診断した158例を対象に原因菌と10年毎の年次別推移について臨床的解析を行った.年齢分布は乳児が50.6%と過半数を占め, この中で新生児の占める割合は46.3%であった.死亡率は18.4%で, 1975年~1984年の10年間では26.8%であったが, その後の10年間では13.7%に減少していた.原因菌は25菌種におよび, Stophylococcus aureusが29例 (18.4%) と最も多く, 次いで, Aeudomonas sp.24例 (15.2%), Escherichia coli 19例 (12.0%), Haemophilus influenzae 18例 (11.4%) の順であった.最近10年間に増加傾向にあるものはHinfluenzae, Acinetobacter sp., Streptococcus pneumoniae, GroupB Streptococcus (GBS) であった.菌種別死亡率は, Klebsiella sp.28.6%, Reudomonas sp.25.0%, S.aunus 24.1%, S.pneumoniae 22.2%であり, H.influenzaeおよびAcinetobacter sp.による死亡例はなかった.年齢別原因菌については, Ecoli, GBSは新生児および乳児に多く, H.influenzaeは主に乳幼児期の髄膜炎に合併し, Acinetobacter sp.は新生児および幼児・学童の白血病に合併したものが多かった.さらに基礎疾患との関係では, Pseudomonassp., Klebsiella sp., Acinetobacter sp.は基礎疾患を持つ例に多く, Ecoli, H.influengae, S.pneumoniaa GBSは基礎疾患を持たない例に多かった.
  • 第2報: 予後を規定する因子の解析
    佐藤 達也, 和田 靖之, 岡崎 実, 小林 信一, 岡部 信彦, 衛藤 義勝, 久保 政勝, 前川 喜平
    1996 年 70 巻 8 号 p. 784-791
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1975年から1994年の20年問に東京慈恵会医科大学付属病院に入院し, 血液培養が陽性で臨床的に敗血症と診断された158例を対象に基礎疾患, 合併症, 臨床症状, 検査所見等について検討し, 予後を規定する因子を推測した.基礎疾患は50.0%に認められ, 白血病を含む悪性腫瘍が31例 (39.2%) と最も多く, 続いて低出生体重児17例 (21.5%), 再生不良性貧血9例 (11-4%), 先天性心疾患7例 (8.9%) であった.基礎疾患のない群では死亡率8.9%だが, 基礎疾患を持つ群では27.8%と予後が悪かった (p<0.05).合併症では, 髄膜炎24.7%, DIC19.6%, ショック15.2%, 肺炎10.8%の順に多く, 予後ではショックで66.7%, DICで45.2%と他の合併症と比較して高い死亡率を示した (p<0.01).臨床症状では, 予後不良群で呼吸困難i, 咳漱, 腹部膨満, チアノーゼ, 脾腫, 末梢冷感 (以上p<0.01), 肝腫 (p<0.05) を認め, いずれも40%以上の死亡率であった.血液検査所見では, 白血球数4,000/mm3以下, 血小板数5万/mm3以下, 総蛋白5.Og/dl以下, 血沈20mm/hr以下で有意に予後不良であった (p<0.01).血液培養と各種培養の一致率を比較すると, 便培養ではEcoli57.9%, Klebsiellasp.28.6%と血液培養との一致を認め, Pseudomonas sp., Haemophilus influenzae, Staphylococcusaureusでは血液培養と咽頭培養の一致率がいずれも30%以上であった.抗生物質感受性検査では, 10年ごとの比較でSaureusに若干の耐性化を認めた.
  • 金子 通治, 中村 明子
    1996 年 70 巻 8 号 p. 792-800
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1989年から全国でSEnteritidis (SE) による食中毒, 散発下痢症が急激に増加し, 公衆衛生上問題となっている. 山梨県においてもその年の7月からSE感染症が急増し, 現在もその流行が続いている. そこで今回1985年4月から1995年までの11年間に分離された603株のSEについて, 疫学マーカーを中心に疫学的な特徴を検討した.
    1989年に急増したSE感染症は, 1990, 1991年と年毎に半減し, 以後減少するかにみえた. しかし1992年より再び増加し始め, 1993~1995年の3年間はSEの分離率が各年とも70%と際立って高かった. 月別分離頻度は9月が20.1%と最も高く, 以下8月, 10月の順であった.患者は2歳児が44名で全体の7.3%と最多であった.0~4歳までの乳幼児に多く29.1%を占めた.
    SEのファージ型 (PT) は1988年まではPT8, 1989年はPT34, 1990年以降はPT4が主流で37.6%, 次いでPT1が25.9%であった. 年毎に新しいPT株が出現 (1992年PT1, 1994年PT22, PT9, 1995年PT5) し, 多彩化が目立った. 薬剤耐性型はSM1剤耐性型が69.2%, 保有プラスミドは60kb単独が61.5%を占めた. 現在最も多いパターンは, PT4, SM1剤耐性, 60kbプラスミド保有で, 167株27.7%, 次いでともにPT1株でSM1剤耐性, 60kb型およびSA・SM・TC耐性, 60, 7.5kbプラスミド保有型であった. SEのファージ型, プラスミドプロファイル, 薬剤耐性型の間にそれぞれ関連性があり, 感染源の究明には3種類の疫学マーカーの組合せが必要であることが示唆された.
  • 鍋島 篤子, 池松 秀之, 山家 滋, 林 純, 原 寛, 柏木 征三郎
    1996 年 70 巻 8 号 p. 801-807
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高齢者はインフルエンザのハイリスクグループと考えられ, 欧米ではワクチン接種が推奨されている. しかし, 本邦での高齢者におけるインフルエンザの流行についての報告は少ない. 今回, 1992年1月から3月にかけて, 高齢入院患者が90%を占める, 福岡市内の病院の2つの病棟でのインフルエンザの流行を経験した. A病棟の96名及びB病棟の118名計214名の入院患者について, 37.5℃以上の発熱の多発が1月29日から2月10日までと, 2月25日から3月5日までに見られた. これらの発熱症例で, 発熱初日および2週目以降のペア血清が得られた65名中39例 (60.0%) でインフルエンザウイルスA (H3N2) に対する抗体価の4倍以上の上昇が認められた. さらに, 7例の咽頭ぬぐい液からインフルエンザウイルスA (H3N2) が分離され, その流行が確認された. インフルエンザ例39例の最高体温は, 39℃ 以上の者が18名 (46.2%) で, 同時期の非インフルエンザ例の最高体温より有意に高かった. インフルエンザ例39例において, 発熱期間は8日以上のものが12名, 1日のみのものは6名であり, 非インフルエンザ例の発熱期間より有意に長かった. 肺炎の合併は, 10名 (25.6%) に認められ, すべて70歳以上であった. 死亡例は2例で, いずれも80歳以上であった. 以上1992年1月から3月の流行期において, インフルエンザは高齢者においても高い発熱を来し, 他の要因による発熱より発熱期間は長いと考えられた. また, 高い肺炎合併率を有し, 死亡の要因となる可能性があり, 特に70歳以上の高齢者において重要な疾患であると考えられた.
  • 辻本 正之, 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 濱田 薫, 前田 光一, 坂本 正洋, 寺本 正治, 森 啓, 成田 亘啓, 喜多 英 ...
    1996 年 70 巻 8 号 p. 808-814
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    経気管吸引法 (以下TTA) を施行しHaemophilus influenzae (以下H.influenzae) を検出した症例で, 明らかな慢性下気道感染症の病歴を有しない急性呼吸・器感染症症例26例27回の臨床的検討を行った.
    気管支炎症例が14例15回 (院内10回, 院外5回, 単独検出6例7回, 複数菌検出8例8回), 肺炎症例が12例12回 (院内7回, 院外5回, 単独検出1例1回, 複数菌検出11例11回) で肺炎症例に有意に複数菌検出例が多かった.気管支炎症例では同時検出菌は, α-Streptococcusが多く, 肺炎症例ではNeisera, S.Pneumoniae, Momxellaが多かった.
    平均年齢は単独菌検出例59.4±10.8歳, 複数菌検出例72.1±8.1歳で, 高齢者に複数菌検出が有意に多かった.肺炎症例では気管支炎症例に比較して高体温, 末梢血白血球数・CRP高値の傾向が認められた.複数菌検出症例では単独検出例に比較して, PaO2低値, CRP高値, 高体温の傾向が認められた.気管支炎症例中での比較では複数菌検出例で有意にPaO2低値であり, CRPが高値の傾向が認められた.予後との関連では肺炎症例で, 高齢で複数菌検出例で1例死亡した他は全例改善が認められたが, 肺炎症例, 複数菌症検出例に治療期間が長い傾向が認められた.
  • 尾畑 浩魅, 甲斐 明美, 関口 恭子, 松下 秀, 山田 澄夫, 伊藤 武, 太田 建爾, 工藤 泰雄
    1996 年 70 巻 8 号 p. 815-820
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1989~1995年の7年間に海外旅行者から分離された腸炎ビブリオ478株について, RPLA法で神奈川溶血毒産生性を検討した結果, 108株が`弱または非'産生であった.これら108株を対象に, PCR法でtrh及びtdh遺伝子保有状況を調べた結果, 98株 (90.7%) がtrh遺伝子を保有していた.その内, 03: K6 (6株) など13種類の血清型菌35株はtrh遺伝子単独保有, 01: K69 (14株), 03: K72 (8株), 06: K46 (7株) など17種類の血清型菌63株はtrhtdhの両毒素遺伝子を保有していた.また, 01: K56, 01: KUT, O3: KUT, O5: KUTの4種類の血清型菌では, trh遺伝子単独保有株と, trhtdhの両毒素遺伝子保有株の両者が認められた.
    これらtrh遺伝子を保有している98株について生化学的性状を検討した結果, その全てがウレアーゼ産生の非定型的性状を示した.また, 06: K18の4株のみがズルシトール発酵, 01: K1の5株のみがインドール非産生の非定型的性状であった.一方, 神奈川溶血毒強産生性の370株は, 全株がウレアーゼ非産生の定型的性状を示した.
  • 1. 外膜複合体を用いたELISA法キットの評価
    岸本 寿男, 窪田 好史, 松島 敏春, 井筒 浩, 松本 明, 副島 林造, 守川 俊英, 川越 清隆
    1996 年 70 巻 8 号 p. 821-829
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    種特異性が高く, 客観的な陽性判定のできるヒト血清中の抗Chlamydia pneumoniae (Cpneumoniae) 抗体測定キットの開発を目的として, Cpneumoniaeの外膜複合体タンパクを用いた酵素免疫測定法 (ELISA法) を確立した.C.pneumoniae YK-41株から基本小体 (EB) を精製し, さらにSarkosy1処理, DNaseとRNaseで処理してクラミジア外膜複合体 (COMC) を得た.このCOMCを抗原としたELISA法により, C.pneumoniae抗原陽性患者の血清51検体を反応させ, microimmunofluorescence test (Micro-IF法) による抗体価と比較した.その結果, 相関係数は0.950 (IgG), 0.852 (IgA), 0.886 (IgM), 一致率は90.2%(IgG), 84.3%(IgA), 82.4%(lgM) と良好であった.不一致検体についてWesternblot法により解析したところ, 80.0%(IgG), 87.5%(IgA), 88.9%(1gM) が本ELISA法の結果と一致し, 本ELISA法の有効性が示唆された.また, 3種のクラミジアに対するマウス抗血清を反応させたところ (IgG), 抗C.pneumoniae血清の反応性が最も強く, 抗Chlamydiatmchomatis (C.tmchomatis) 血清, 抗Chhrnydia psittaci (CpSittaci) 血清の反応性はそれぞれ1/32, 1/4程度であった.さらに, Ctmchomatis感染症患者の血清及びC.psittaci感染 (オウム病) 患者の血清を反応させたところ, Micro-IF法によるCtmchomatis抗体価やC.psittaci抗体価よりも, Cpneumoniae抗体価との相関性が良く, C.pneumoniaeに対する特異性の高いことが示唆された.
  • 2. 臨床的有用性及び血清学的診断基準の検討
    岸本 寿男, 窪田 好史, 松島 敏春, 井筒 浩, 松本 明, 副島 林造, 沼崎 啓, 千葉 俊三, 山崎 勉, 佐々木 望, 賀来 満 ...
    1996 年 70 巻 8 号 p. 830-839
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は, 新たに開発されたenzyme。linkedimmunosorbentassay (ELISA法) による抗Chlamydiapneumoniae (C. pneumoniae) 特異抗体検出試薬を用いて抗体価を測定し, その臨床的有用性を検討した.
    呼吸器感染症患者の血清418検体のIgG, IgA及びIgM抗体を測定し, 同一検体のmicroimmunofluorescence test (Micro-IF法) による抗体価と比較した結果, 相関はいずれも良好であった. 陰性一致率は, 陽性一致率に比べより高値を示した. 不一致検体についてWestern blot法により解析したところ, ELISA法の結果と高い一致率を示した.
    さらに初診時の小児 (0~15歳) 及び成人 (16~90歳) における抗原陽性と抗原陰性別の抗体陽性率は, 成人ではIgG, IgAに有意差は認められなかったが, 小児では共に有意差を認めた. また, IgM陽性率は, 小児及び成人共に有意差を認めた.
    また, 抗原陽性患者34例の内, Micro-IF法でIgG抗体価≧512を示したものは, ELISA法において全てIgG吸光度≧0.6であり, またIgA吸光度≧0.2であった.
    これらの結果から, 本ELISA法の臨床的有用性が示唆された. さらに, 本法におけるC. pneurnoniae感染症の血清学的診断意義及び急性感染の判定基準について考察した.
  • 秋原 志保, 中山 美由紀, 柿沢 淳子, 金 保洙, 和泉 桂子, 牛島 廣治
    1996 年 70 巻 8 号 p. 840-841
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 久手堅 憲史, 川上 和義, 當山 雅樹, 草野 展周, 斎藤 厚
    1996 年 70 巻 8 号 p. 842-843
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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