1989年から全国でSEnteritidis (SE) による食中毒, 散発下痢症が急激に増加し, 公衆衛生上問題となっている. 山梨県においてもその年の7月からSE感染症が急増し, 現在もその流行が続いている. そこで今回1985年4月から1995年までの11年間に分離された603株のSEについて, 疫学マーカーを中心に疫学的な特徴を検討した.
1989年に急増したSE感染症は, 1990, 1991年と年毎に半減し, 以後減少するかにみえた. しかし1992年より再び増加し始め, 1993~1995年の3年間はSEの分離率が各年とも70%と際立って高かった. 月別分離頻度は9月が20.1%と最も高く, 以下8月, 10月の順であった.患者は2歳児が44名で全体の7.3%と最多であった.0~4歳までの乳幼児に多く29.1%を占めた.
SEのファージ型 (PT) は1988年まではPT8, 1989年はPT34, 1990年以降はPT4が主流で37.6%, 次いでPT1が25.9%であった. 年毎に新しいPT株が出現 (1992年PT1, 1994年PT22, PT9, 1995年PT5) し, 多彩化が目立った. 薬剤耐性型はSM1剤耐性型が69.2%, 保有プラスミドは60kb単独が61.5%を占めた. 現在最も多いパターンは, PT4, SM1剤耐性, 60kbプラスミド保有で, 167株27.7%, 次いでともにPT1株でSM1剤耐性, 60kb型およびSA・SM・TC耐性, 60, 7.5kbプラスミド保有型であった. SEのファージ型, プラスミドプロファイル, 薬剤耐性型の間にそれぞれ関連性があり, 感染源の究明には3種類の疫学マーカーの組合せが必要であることが示唆された.
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