感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
ラット慢性細気管支炎モデルにおける免疫学的検討
気管支随伴リンパ組織 (BALT) の免疫動態と抗体産生について
北澤 浩佐藤 篤彦岩田 政敏
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 71 巻 3 号 p. 214-221

詳細
抄録

びまん性汎細気管支炎やcystic fibrosisをはじめとする慢性気道感染症の免疫学的な病態の解明は十分になされていない. 気道には気管支随伴リンパ組織 (BALT) と呼ばれるリンパ組織が存在しており, 慢性気道感染症においてその過形成がしばしぼ観察されている. 慢性気道感染症におけるBALTの役割を明かにするため, 緑膿菌によるラット慢性細気管支炎モデルを作製し, 検討をおこなった. 組織では細気管支周囲のリンパ球, 泡沫細胞の集簇が認められヒトの慢性細気管支炎に類似していた. また, BALTの過形成が観察された. 免疫組織では, 4-7日目にBALTや末梢気道壁においてIa抗原陽性細胞, helperT細胞, surface IgM陽性細胞, surface IgA陽性細胞が徐々に増加し, 気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中の抗緑膿菌IgA抗体価も上昇した. 21目以降にはnon-helperT細胞が, helper T細胞に比して増加し, 各種免疫グロブリン陽性細胞やBAL液中の抗緑膿菌IgA抗体価は, 低下し, 組織でも炎症所見が軽減した. このようにBALTと末梢気道壁の各種免疫細胞の推移, BAL液中抗緑膿菌IgA抗体価の推移はほぼ一致していた. 以上の所見より免疫グロブリン産生細胞は, 少なくともその一部は過形成BALTからもたらされている可能性が示唆され, BALTが慢性気道感染症における肺局所の免疫応答に重要な働きを担っていると推察された.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top