感染症学雑誌
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老人病棟における院内感染対策継続中の黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別推移
真崎 宏則吉嶺 裕之鬼塚 正三郎星野 晶子土橋 佳子黒木 麗喜貝田 繁雄松本 慶蔵井口 和幸渡辺 貴和雄田尾 操力富 直人永武 毅
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1997 年 71 巻 3 号 p. 229-235

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抄録

内科老人病棟において1980年代MRSA各種感染症が急増しminocycline (MINO) を多用した結果, MINOの耐性化が進んだ. そこで1987年以降MINOの使用制限を開始し, 1991年10月以降院内感染防止対策の一つとして第2世代セフェム剤, 第3世代セフェム剤の使用制限を追加した.
今回, 1992年3月から1993年6月までを対策後として分離された黄色ブドウ球菌313株 (鼻腔86株, 咽頭60株, 喀痰45株, 尿40株, 褥瘡65株, 血液17株) のMICとコアグラーゼ型別を調査し対策開始前の成績と比較検討したところ, 1983年1月から1985年3月までの喀痰由来黄色ブドウ球菌においてII型が優位であったが, 1987年以降はVII型優位となりMINO耐性株が増加した. しかしながら1991年にはII型が再び優位となり, 今回の検討でもII型優位が続いていた. コアグラーゼ型別はMINOに対する耐性化と時期を同じくしてII型優位からVII型優位に推移し, MINOの使用制限5年目以降でVII型優位からII型優位に復帰した. 一方MINO使用制限6年目で0.1μg/mlにピーク値をもつMINO高度感受性株の出現を認め, 感受性の回復がみられた.

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© 日本感染症学会
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