抄録
紅茶エキスによるうがいが, インフルエンザを予防できるかどうかを検討した.実験は, 平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5カ月間行なった.まず同一職域集団297人を2群に分け, 実験群151人は, 原則として8時と17時の2回, 1回約100ml程度の紅茶エキス (0.5W/V%) でうがいをした.対照群146人は, 特に何も行なわなかった.実験期間中にインフルエンザ症状を呈した者56人の咽頭ぬぐい液からウイルスを分離し抗原分析をした結果, A型ウイルスH3N2が2株およびB型ウイルス10株が分離された.感染の判定は, 実験開始時および終了時に採血を行い, A/Yamagata/120/86 (HIN1), A/Saitama/55/93 (H3N2), B/Saitama/5/93と赤血球凝集抑制反応を行ない, 抗体価が4倍以上上昇したものを感染とみなした.
その結果, 感染者は実験群35.1%に対して対照群では48.8%で, 有意な差 (p<0.05) が認められた.この結果, 紅茶エキスによるうがいは, インフルエンザを阻止しうる可能性が示唆された.