感染症学雑誌
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PCR法による大腸菌O157抗原の同定
塚本 定三河合 高生
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1998 年 72 巻 7 号 p. 738-741

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抄録

大腸菌O157はいくつかの大腸菌および他の菌種とO抗原の一部が共通であるため, それらとの問で血清学的に類属反応が認められる. そこでO157抗原の特異性を決定しているrfbE(Ec O157: H7) 遺伝子に注目し, PCR法によりO157抗原を同定することを試みた. その結果, 供試した志賀毒素産生性大腸菌 (STEC), O157: H7, O157: H-およびSTECでない大腸菌O157のすべての株に大腸菌O157 rfbE遺伝子の存在が認められた. 一方, 大腸菌O157以外の血清型のSTEC, 腸管病原性大腸菌 (EPEC) およびO157を除く大腸菌O血清型別用標準株はすべて陰性であった. また, Salmonella O30, Citrobacter freundiiは大腸菌O157検出キットで陽性を示したにもかかわらず, rfbE遺伝子の検出はなかった. このことから, 今回報告したPCR法を用いることにより, 野外から分離された菌株が大腸菌O157か, 共通のO抗原を持つ菌種かの鑑別に有効な手段となると思われる.

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