感染症学雑誌
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我が国医科大学の医学部学生に対する院内感染防止対策について
アンケート調査による
寺田 喜平新妻 隆広大門 祐介片岡 直樹二木 芳人
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2000 年 74 巻 5 号 p. 465-469

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抄録

医療関係者だけでなく, 臨床実習の学生も, 院内感染に関係する. 今回, 我が国医科大学の医学部学生に対する院内感染対策, 特にワクチンによって予防可能な疾患に関する現況と問題点を明らかにする目的でアンケート調査を行った. 57校 (71%) から回答を得た. 12%の大学で学生の院内感染例を経験し, 感染の内訳は麻疹, 水痘, 流行性耳下腺炎が3例ずつ, 風疹, B型肝炎, 結核が2例ずつであった. 学生から入院患者への感染例はなかった. 学生に既往歴やワクチン接種歴を報告させている大学が14%, 抗体検査実施大学が70%, 何もしていない大学が28%であった. 検査項目はB型肝炎が93%, 風疹25%, 麻疹23%, 水痘18%, 流行性耳下腺炎15%などであった. 抗体測定方法はCF法などの感度の低い方法で検査している例があった. 料金は48%が大学側の全額負担, 35%が一部補助であった. ツベルクリン反応は40%で実施され, その57%でBCGを接種していた. ワクチン接種は40%の大学で勧奨され, その85%は集団接種されていた. ワクチン料金は大学の全額負担は38%, 一部補助が15%で, 全額負担例はすべてB型肝炎ワクチンであった. その資金は81%の大学が支払っていたが, 一部で大学後援会や父兄会の補助があった. 対策はほとんどがB型肝炎に対してで, 結核や水痘や風疹などの感染に対するものは少なく, 今後の対応が待たれる.

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