感染症学雑誌
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高齢者施設でのA香港型インフルエンザ流行時におけるアマンタジンの使用経験
池松 秀之鍋島 篤子鄭 湧李 文梶山 渉原 寛林 純柏木 征三郎
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2000 年 74 巻 5 号 p. 476-480

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抄録

1998/99年期のインフルエンザ流行時に, 特別養護老人ホームでのインフルエンザの治療に, アマンタジンを使用した. 福岡市内の特別養護老人ホームで, 1999年1月にA香港型インフルエンザ (H3N2) の流行が見られた. インフルエンザ様疾患を発症した入所者は, 1999年1月10日より1月31日までの期間において, 調査した264名中112名 (42.4%) であった. インフルエンザ様疾患の発生率は居住区により異なっていた. 1月21日の時点で, 発熱出現より3日以内の入所者15名 (男性2人, 女性13人, 平均年齢82.1歳) に, 1日量100mgを朝夕2回に分けて5日間投与を行った. 1月21日の発症者に対するアマンタジン投与開始後, 新規のインフルエンザ様疾患発症者数は減少し, アマンタジンを用いた発症者に対する早期治療により, 流行の拡大が抑えられたと考えられた. 治療としてアマンタジン投与を受けた15例の発熱期間の平均は3.6日で, アマンタジン投与を受けなかった97例の発熱期間の平均は4.4日であった. 発症1日目 (24時間以内) から投与が開始された5例の発熱期間の平均は2.6日と最も短く, アマンタジンの発症24時間以内の投与が, 高齢者において有効と考えられた.
アマンタジンは, 高齢者のA型インフルエンザの治療に有用であり, 高齢者施設でのアマンタジンによる発症者に対する早期治療は, インフルエンザ流行の拡大の防止にも, 有用であると思われた.

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