感染症学雑誌
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長期有熱患者におけるQ熱リケッチア (Coxiena burnetii) 保菌の頻度ならびに臨床症状の検討
袴田 康弘石川 由紀子長岡 宏美秋山 真人
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2002 年 76 巻 11 号 p. 901-910

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抄録

Prospective studyとして本邦で初めて, 慢性型Q熱リケッチア感染症の検討を報告する. 感染の同定には, 従来の血清学検査ではなく, Nested PCR法でのスクリーニングとA/Jマウスを用いたバイオアッセイによる確認を行った.
原因不明で一カ月以上にわたって発熱がみられた患者 (≦37.5℃) を対象として, 1999年1月から2000年9月までの観察期間で, Q熱リケッチア (Coxiella bumefii) 保菌者の頻度をNestedPCR法により検討した. 結果は54例中13例 (24.1%) が陽性であった. C. bumefii感染者では, 発熱の症状だけでなく, 倦怠感 (7例), 頭痛 (7例), 嘔気 (5例), 咳 (4例), 睡眠障害 (3例) など複数の症状を訴えた. 非感染群 (41例) では, 持続する微熱だけの訴えが多かった (25例, 61.0%). 感染群では, CRP (0.69±1.19mg/dl), 白血球数 (6089±2189/μl), 好酸球数 (a.4±3.6%), 自己抗体陽性率 (53.8%) において非感染群と有意差はなかった. 血清IgE高値の患者が感染群に多かった (76.9%: 22.0%, p=0.016). さらに, 血清IgE値が感染群で有意に高値であり, 血清IgEとC. burnetii感染の関連が示唆された (1, 388±1706vs.533±913IU/ml, P=0.045). 感染者12例にミノサイクリン (200mg/日) を4週間投与したが, 全例でDNA検出は陰性となり, 9例で症状は軽快した. 3例では, 発熱は軽快したが症状は継続し, Nested PCR法でのDNA検出は一旦陰性化した後, 2-3カ月で再度陽性となり治療抵抗性の可能性が示唆された.

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