感染症学雑誌
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発展途上国に長期滞在する日本人の腸管寄生虫感染状況の変化
濱田 篤郎奥沢 英一氏田 由可本藤 紀代美大久保 紀彦西川 哲男馬杉 則彦
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2003 年 77 巻 3 号 p. 138-145

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抄録

1995年から2000年までに実施された発展途上国に長期滞在する日本人の糞便内寄生虫検査結果をもとに, 腸管寄生虫感染状況の変化を検討した. 各年の腸管寄生虫感染率は, 1995年 (3.0%) から1998年 (1.6%) にかけて減少傾向にあったが, 1999年 (2.0%) より上昇し, 2000年には2.5%に達した. 地域別ではアフリカの感染率が各年とも最も高く, とくに1999年より感染率の上昇が認められた. 検出された寄生虫は, Heterophyidae (異型吸虫類) が6年間で51件と最も多く, Giardia lamblia (42件), 非病原性アメーバ類 (40件), Trichuris trichiura (30件) と続いた. Heterophyidaeは1999年よりアフリカのエジプトで感染率の著明な上昇があり, 集団感染の発生が示唆された. この原因を解明するため, 感染者の食歴等を調査した結果, 現地産のボラの卵巣を加工したカラスミが感染源として推測された. 発展途上国に長期滞在する日本人の腸管寄生虫感染率は次第に低下傾向にあるが, 特殊な食品を原因とする感染が散発している. 今後も飲食物に関する注意を呼びかけ, 腸管寄生虫の感染予防につとめる必要があるものと考える.

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