肝臓
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症例報告
多様な側副血行動態を示し, 治療に難渋した十二指腸静脈瘤の1例
田嶋 宏之渡辺 勲史川添 一哉小嶋 清一郎鈴木 孝良峯 徹哉小泉 淳幕内 博康
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2005 年 46 巻 6 号 p. 382-388

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抄録

今回我々は, 繰り返し行った食道静脈瘤治療の2年後に発生した十二指腸静脈瘤を経験した. 症例は45歳の男性. アルコール性肝硬変の患者で, 2000年12月に吐血し, 内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) による止血が行われた. 退院後も吐血を繰り返し, 2001年12月までにEVL1回, 内視鏡的硬化療法 (EIS) 計6回が施行された. 2002年11月に門脈本幹の血栓と十二指腸水平脚に静脈瘤が指摘された. その血行動態として, 下膵十二指腸静脈を経て十二指腸静脈瘤に至る流入路がみられ, その後無名シャントを経て左精巣静脈より左腎静脈, 下大静脈への流出路が認められた. 経皮経肝門脈塞栓術 (PTO) とバルーン閉塞下逆行性経静脈閉塞術 (B-RTO) を同時に行うdual balloon occluded embolotherapy (DBOE) を試みたが, 血流遮断効果は十分得られなかった. その後Histacryl®を用いたEISを施行し, 最終的に十二指腸静脈瘤の血管が硬化された. しかし治療後新たに第1空腸静脈を介する別のシャントが形成され, 前回より肛門側に新たな十二指腸静脈瘤が形成された. 食道, 胃静脈瘤治療に伴い今後十二指腸静脈瘤が増加することが予想され, 本例はその多様な側副血行動態および治療法の観点から, 示唆に富む症例と考えられた.

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© 2005 一般社団法人 日本肝臓学会
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