2007 年 48 巻 6 号 p. 278-283
症例は41歳男性.2005年5月下旬から全身掻痒感を認め近医を受診.血液検査で肝機能障害を認めたため当科を紹介され,5月28日入院となった.入院時検査で肝炎ウイルスマーカー陰性,抗核抗体陰性,抗ミトコンドリアM2抗体陰性,抗LKM-1抗体陰性,抗平滑筋抗体陰性であった.1回目の肝生検像は急性肝炎の所見であった.肝機能障害の改善なくプレドニゾロン(PSL)内服を開始したところ肝機能障害は改善した.外来にてPSL中止したところ,肝機能障害増悪を認め8月16日に当科第2回目入院となった.第2回目入院時の抗核抗体は160倍と陽性であり,肝生検では門脈域に高度のリンパ球浸潤を認め,interface hepatitisの所見を呈していた.以上のことから自己免疫性肝炎と診断し,PSL再開したところ肝機能障害は改善した.本例は,自己免疫性肝炎の発症初期像を捉えられたことから,貴重な症例と考えられた.