2012 年 53 巻 12 号 p. 821-828
症例は57歳,女性.他院にてC型慢性肝炎に対してインターフェロン治療および前医にて肝S6の肝細胞癌に対して肝動脈塞栓術の治療歴がある.肝S3の肝細胞癌の再発と同時期に肉眼的血尿を発症,急速に腎機能の悪化を呈し急速進行性糸球体腎炎と診断した.肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝S3部分切除術を施行し,術後経過は良好で術6日後に退院となった.その後の外来経過観察にて血尿の程度は徐々に減少したのち消失,さらにBUN,Cre値も正常範囲にまで改善した.急速進行性糸球体腎炎は突然発症し,急速に慢性腎臓病に進行する予後不良な腎炎で,その原因は様々であるが,自験例では肝細胞癌の出現とともに発症したANCA陰性の腎炎が肝細胞癌の切除により軽快しており,両者の関連が考えられる.