抄録
症例は74歳女性.平成15年頃に肝硬変(C型)と糖尿病を指摘された.平成18年に肝細胞癌を発症し,以後4回肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した.その後の腹部CTで左葉外側区と肝S8に約2 cmの肝細胞癌再発が疑われた.平成19年10月30日,血管造影検査にて肝細胞癌と診断され,TACEを施行された.術後より頻回の嘔吐と心窩部痛,術後4日目より38度台の発熱を認め,対症療法を行った.術後6日目深夜に心肺停止状態で発見され,心肺蘇生術に反応せず死亡した.急変時は著明な貧血と黄疸を示しており,同日病理解剖を行った.
マクロ所見では明らかな臓器出血は認めなかったが,大動脈は赤褐色を呈していた.ミクロ所見では全身の各臓器にグラム陽性桿菌の増殖を認めた.術後5日目の血液培養よりClostridium perfringens(C. perfringens)が検出され,同菌による敗血症と発作性溶血が今回の死因と考えられた.TACE後にC. perfringens敗血症となり,急激な溶血を伴った症例の報告は少なく,今回若干の文献的考察も加えて報告する.