2012 年 53 巻 5 号 p. 284-290
症例は69歳,男性.C型肝硬変・肝細胞癌(HCC)に対する治療を繰り返していたが,増悪したため,ミリプラチン動注療法目的で入院となった.第0病日,HCCに対してミリプラチン動注療法(計102 mg)を施行した.第8病日頃より,咳嗽・喀痰が出現し,第17病日の胸部CTでは両側肺野のびまん性擦りガラス状陰影を認めた.PaO2 53 Torrと著明な低酸素血症を認め,急性呼吸不全にて人工呼吸器管理とし,ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1 g/日3日間)を開始した.その後徐々に呼吸状態は改善し,第24病日,人工呼吸器より離脱した.第53病日の胸部CTでは肺炎像は著明に改善していた.血液検査・喀痰培養・気管支肺胞洗浄などの結果から感染による肺炎は否定的であり,ミリプラチンによる薬剤性肺障害の可能性が高いと考えられた.