肝臓
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原著
進行肝細胞癌に伴う下大静脈腫瘍栓,門脈腫瘍栓に対する放射線治療の有効性
小山 幸法波多野 悦朗田浦 康二朗中村 公治郎長田 博光成田 匡大石井 隆道松尾 幸憲上本 伸二
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2012 年 53 巻 8 号 p. 486-493

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抄録

切除不能肝細胞癌で,下大静脈腫瘍栓(5例)および門脈腫瘍栓(6例)の病勢コントロール目的に放射線治療(総線量39-60 Gy)を行った計11例を対象とし腫瘍栓に対する放射線治療の効果,腫瘍栓の無増悪期間,有害事象を検討した.腫瘍栓に対する前治療は11例中10例に肝動脈注入化学療法が行われていた.下大静脈腫瘍栓に対する有効性はCR 1例 PR 2例 SD 2例(奏効率60%)であったのに対し,門脈腫瘍栓ではPR 1例 SD 4例 PD 1例(奏効率16.7%)であった.放射線治療開始日からの生存期間中央値は下大静脈腫瘍栓症例で401日(141-612日),門脈腫瘍栓症例で374日(136-469日)であった.有害事象としては1例に放射線性肺臓炎を認めたが軽快した.放射線治療に伴う治療関連死は認めなかった.切除不能,肝動注不応腫瘍栓に対する放射線照射は,特に下大静脈腫瘍栓の病勢コントロールに有用である可能性が示唆された.

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© 2012 一般社団法人 日本肝臓学会
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