三重県北部地域在住の67歳の男性が急性肝炎を発症した.IgA-HEV抗体及びHEV RNAが検出され急性E型肝炎と診断された.HEVのsubgenotypeはわが国では稀な3f型と判定された.海外渡航歴はなく国内での感染と考えられた.発症前3カ月以内の県外への移動はなかった.狩猟を生業としており,捕獲した猪や鹿の解体も自ら行っていた.保管されていた猪肉から同定されたHEVは3b型に分類されたが,捕獲した動物を素手で解体していたことから,動物からの感染が強く疑われた.3f株による国内感染E型肝炎例は稀で,群馬県,埼玉県及び岐阜県の症例に継いで本例は4例目である.今後広く全国で3f株によるE型肝炎が発生する可能性があり,本来ヨーロッパ株である3f株が土着化しているのか,豚や猪での感染調査を含め,その感染源,感染ルートの解明が急がれる.3f株例では急性肝不全を生じた例も報告されている.E型肝炎では,積極的に遺伝子解析を行い病態との関連性を検討する必要がある.