症例は53歳,男性.腹部膨満感,体重増加,両下腿浮腫を主訴に精査入院.画像検査では肝右葉の約15 cmの巨大な境界不明瞭で内部不均一な腫瘤をはじめ,肝全体に1~2 cm大の無数の腫瘍が認められ,これにより肝臓は腫大していた.他にも腹部大動脈周囲リンパ節転移,腹膜播種,および多発骨転移を認めた.第5病日に超音波ガイド下肝腫瘍生検を施行し,病理組織学的に小細胞癌と診断した.
画像的所見から肝内病変が肺を含めた他の病変に比べ明らかに大きいこと,および上部消化管で悪性所見がないことを考慮し肝臓を原発とする小細胞癌と診断した.その後,急激に全身状態が悪化し,第20病日に死亡した.小細胞癌は肺原発がほとんどであり,肺外小細胞癌は全体の2.5-4%である.肝原発はさらに頻度が低くきわめて希な疾患であり,予後不良と報告されている.さらなる症例の蓄積により病態解明につながることを期待して報告した.