肝原発扁平上皮癌の1剖検例を経験したので報告する.症例は59歳男性.発熱,心窩部を主訴に受診した.肝胆道系酵素,炎症反応の上昇を認め,肝右葉から肝門部にかけて8 cmの腫瘤性病変を認め,総胆管を閉塞していた.緊急でERCPを施行し,胆道ドレナージを行った.総胆管閉塞部からの擦過細胞診と胆汁細胞診で扁平上皮癌を認めた.また,腫瘍は十二指腸と横行結腸へ浸潤しており,腫瘍結腸瘻を形成していた.以上より,肝内胆管癌,肝門部・十二指腸・横行結腸浸潤と診断した.腫瘍が広く浸潤しているため根治手術は困難であり,人工肛門造設,消化管バイパス,胆道ステント留置後に全身化学療法を施行した.治療効果は乏しく,受診から約4カ月で永眠された.剖検を施行し,腫瘍の成分はすべて扁平上皮癌であり,肝原発扁平上皮癌と診断した.