81歳男性,201X年4月に肝障害を契機に当科を紹介受診した.CT検査にて肝左葉を占拠する15 cm大の巨大腫瘍を認め,切除不能肝細胞癌と診断した.原発巣が大きいため,まず腫瘍減量を目的にエピルビシン含浸球状塞栓物質による肝動脈化学塞栓療法を先行した後に分子標的薬による全身化学療法を行う方針とした.腫瘍崩壊症候群や塞栓後症候群の対策として一括での塞栓を避け,同年5,6,7月にDEB-TACEを分割施行した.治療に際して一過性の肝障害以外の有害事象は認めず,肝予備能は良好に保たれた.続いて同年8月より,腫瘍辺縁の残存病変に対し分子標的薬であるレンバチニブを開始した.3カ月後のCTによる治療効果判定では完全奏効(CR)が得られ,腫瘍マーカーはAFP,PIVKA-2ともに正常範囲となった.以降レンバチニブ継続にてCRを維持している.