2023 年 64 巻 12 号 p. 618-623
症例は50代男性.アルコール性肝硬変にて当科通院中であった.両目の視力低下で救急外来を受診し,頭部MRIで異常を認めず,眼科,脳神経内科にコンサルトしたが視力低下の原因は不明で当科入院となった.肝性脳症を疑い治療を行うも視力の改善なく,代謝性脳症が疑われ脳神経内科に転科となった.頭部MRIを再検し,拡散強調画像で両側基底核に高信号域を認め,代謝性脳症や薬剤性脳症が疑われた.ビタミンB1大量静注,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法等を施行したが視力の改善はみられなかった.家族からの問診で以前にメタノールの飲用歴があったことが判明したため,尿中メタノール検査を施行しメタノール中毒の診断に至った.視力は回復せず全盲のまま退院となった.