肝臓
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64 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 伊藤 心二, 吉住 朋晴
    2023 年 64 巻 12 号 p. 595-602
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    肝臓領域での低侵襲手術として腹腔鏡下肝切除術が定着してきた.2022年4月にロボット支援下肝切除術が保険収載され,安全な導入のため,厳格な施設基準および日本肝胆膵外科学会と日本内視鏡外科学会からの指針が提言され,学会認定プロクターの基準を定めている.ロボットでの精密な手術手技は,より安全性の高い肝切除術を実施できることが期待されている.一方でロボット手技のlearning curveの克服,短期・長期成績の観点からの前向き症例登録によるエビデンスの確立など,ロボット支援下肝切除術の普及にむけての課題は多い.

原著
  • 城下 智, 山下 裕騎, 宇佐美 陽子, 岩垂 隆諒, 奥村 太規, 若林 俊一, 小林 浩幸, 杉浦 亜弓, 木村 岳史, 梅村 武司
    2023 年 64 巻 12 号 p. 603-609
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    HCV抗体検査受検者を対象とし,HCV抗体陽性者の残血清を用いてHCVコア抗原を測定し,受診勧奨を行うことの有用性を前向き非介入観察研究で検討した.HCV抗体陽性率は4.4%(390/8,805例)であった.また,HCVコア抗原陽性率は8.2%(31/378例)であり,HCV抗体価10以上群(n=249)では10未満群(n=129)より高かった(11.6% vs. 1.6%,P=0.002).31例中29例で受診勧奨を行った.1例はHCV-RNAの陰性が確認された.残りの28例はウイルス血症が確認され,9例(32.1%)ではDAA治療が予定された.13例(46.4%)ではHCC合併等のためDAA治療の適応がなく,6例(21.4%)ではDAA治療の希望がなかった.HCV抗体陽性者にHCVコア抗原測定法を併用することには,HCVキャリア例の拾い上げと,受診・受療における有用性が期待される.

症例報告
  • 佐々木 麻友, 長崎 太
    2023 年 64 巻 12 号 p. 610-617
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    症例は30代女性.アルコール性肝硬変で外来に通院し,分岐鎖アミノ酸製剤を含む内服薬加療,禁酒とアルコール依存症の専門医療機関受診の指導を受けていたが,専門医療機関未受診で多量飲酒を継続し,アドヒアランス不良であった.初診から2年後,貧血と脱水,低栄養の進行,CTで脂肪肝と腹水貯留を認め入院.内科的治療と並行して,日本肝臓学会のアルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修を受講した管理栄養士が,肝臓専門医の指導の下,入院中から退院後まで継続的に肝硬変の栄養療法ならびに禁酒・飲酒量低減について介入し,飲酒量低減,栄養状態と肝予備能改善が得られた.本eラーニング研修を受講した管理栄養士による介入は,アルコール性肝硬変患者の集学的治療に有効であることが示唆された.

  • 梅谷 聡太, 宮﨑 将之, 立花 雄一, 上田 哲弘, 明石 哲郎
    2023 年 64 巻 12 号 p. 618-623
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    症例は50代男性.アルコール性肝硬変にて当科通院中であった.両目の視力低下で救急外来を受診し,頭部MRIで異常を認めず,眼科,脳神経内科にコンサルトしたが視力低下の原因は不明で当科入院となった.肝性脳症を疑い治療を行うも視力の改善なく,代謝性脳症が疑われ脳神経内科に転科となった.頭部MRIを再検し,拡散強調画像で両側基底核に高信号域を認め,代謝性脳症や薬剤性脳症が疑われた.ビタミンB1大量静注,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法等を施行したが視力の改善はみられなかった.家族からの問診で以前にメタノールの飲用歴があったことが判明したため,尿中メタノール検査を施行しメタノール中毒の診断に至った.視力は回復せず全盲のまま退院となった.

  • 吉住 有人, 久保木 知, 高屋敷 吏, 江藤 亮大郎, 那須 克宏, 近藤 孝行, 大塚 将之
    2023 年 64 巻 12 号 p. 624-631
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代,女性.C型肝炎のSVR後の経過観察中に肝腫瘤を指摘された.精査の造影CTおよび造影超音波検査では早期相で造影効果を示し,後期相でwash outを呈する27 mm大の腫瘤を認めたが,中肝静脈に流入する流出静脈の描出を認めたため肝血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)と診断し経過観察の方針とした.3カ月後の造影CTでは腫瘤は47 mm大と増大し,流出静脈を認めなくなったため肝細胞癌の可能性を考えて左肝切除術を施行した.病理組織学的検査では腫瘍細胞が中索状に増殖し脂肪変性を認め,中分化型肝細胞癌と診断された.流出静脈の早期描出は肝AMLに特徴的で,脂肪変性を伴う肝細胞癌との鑑別診断に有用とされる.一方,流出静脈の早期描出を認める肝細胞癌の報告例は自験例が初めてであり,脂肪変性を伴う肝細胞癌と肝AMLをより正確に診断するためには今後さらなる症例の集積が必要である.

  • 小田 眞由, 木阪 吉保, 小川 明子, 横山 桂, 砂金 光太郎, 田鶴谷 奈友, 田中 良憲
    2023 年 64 巻 12 号 p. 632-640
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    症例は61歳男性.6年前から糖尿病性腎症による腎不全で血液透析を導入された.30代でC型慢性肝炎を指摘されインターフェロン療法を受けたがウイルスは消失しなかった.40代から肝細胞癌に対して穿刺局所療法や塞栓療法を繰り返し受けてきたが,多発再発が指摘された際に造影剤アレルギーが発症したため塞栓療法が施行困難となり,アテゾリズマブ(Atezo)+ベバシズマブ(Bev)併用療法を開始した.Atezo+Bev併用療法は透析患者に対する投与の報告例はなく有効性や安全性は不明である.我々の症例ではAtezo+Bev併用療法開始後に甲状腺機能低下症と脳出血を来した.しかし,レボチロキシンナトリウム水和物投与とBev投与中止することで長期間にわたり投与継続できており,有害事象の早期発見と対応を行うことで血液透析中の肝細胞癌患者にもAtezo+Bev併用療法を行うことができると考えられた.

  • 神 雄太, 西山 亮, 小金井 雄太, 木村 大輝, 青山 純也, 中野 容, 今井 俊一, 下河原 達也, 山田 暢, 江川 智久
    2023 年 64 巻 12 号 p. 641-648
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    50代男性.未治療B型慢性肝炎の既往があり,人間ドックで肝腫瘤を指摘され,精査の結果肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:HCC)の診断に至った.病変はS8に2カ所あり,開腹肝前区域切除を行い,病理組織診断でvp2を認めた.術後2カ月で施行した造影CT検査で門脈左枝に門脈腫瘍栓(Portal vein tumor thrombosis:PVTT)を認めた.術後早期再発したPVTTであり再肝切除後の再発のリスクが高いと考え,観察期間を設けるためLenvatinib(LEN)投与を開始した.PVTTは放射線定位照射したが,術後9カ月に肝右葉微小転移が指摘された.LEN投与下にPVTTと微小転移は増悪を認めず,AFP値が正常化したため,再発後11カ月で再肝切除を行った.その後,微小転移に対してサイバーナイフを施行し完全寛解した.現在,初回術後43カ月無再発生存中である.

短報
  • 井上 泰輔, 井出 達也, 内田 義人, 小川 浩司, 井上 貴子, 末次 淳, 池上 正, 瀬戸山 博子, 井上 淳, 柿崎 暁, 榎本 ...
    2023 年 64 巻 12 号 p. 649-652
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    This study was conducted in 2021, wherein we investigated in-hospital measures for patients positive for hepatitis virus in 288 hospitals specializing in liver diseases in 13 Japanese prefectures. Our results showed that even at specialty hospitals, the overall countermeasure implementation rate was low (56%). The rate was higher in hospitals that had a higher bed capacity (>400), more full-time hepatologists, and more hepatitis medical care coordinators. Of these three factors, implementation rate was most influenced by coordinator enrollment, with highest involvement by clinical laboratory technologists. Therefore, clinical laboratory technologists should be trained to improve countermeasure rates for both treatment of liver disease and safety management in hospitals. Furthermore, the improvement in the implementation rate of measures for patients positive for hepatitis virus will help in providing better treatment.

  • 畑山 靖樹, 杉山 晴俊, 村上 大輔, 大浦 弘嵩, 嶋 由紀子, 白戸 美穂, 西野 隆義, 新井 誠人, 加藤 直也
    2023 年 64 巻 12 号 p. 653-655
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    A Japanese woman in her 30s was diagnosed with hepatitis B surface antigen positivity during pregnancy with her first child. Her liver function was normal; however, high viral load was observed. In accordance with the guidelines, a nucleic acid analog was administered starting at 28 weeks' gestation. The baby was delivered nearly at term, and the nucleic acid analog was discontinued one day prior to the delivery. Liver dysfunction was observed two months after the analog was discontinued, and the patient was restarted on nucleic acid analog treatment. There are many issues to be resolved, including whether nucleic acid analogs should be discontinued immediately following delivery or continued for certain time or whether breastfeeding should continue during nucleic acid analog treatment.

速報
  • 大根 久美子, 可児 里美, 北村 由之, 鷺 陽香, 金子 敦, 大橋 実, 菊池 祥平, 田中 靖人, 井上 貴子
    2023 年 64 巻 12 号 p. 656-659
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル フリー

    We developed and reported a fully automated, high-sensitivity hepatitis B core-related antigen assay (iTACT-HBcrAg). This study aimed to evaluate the impact of carryover during the use of iTACT-HBcrAg by analyzing samples with high HBcrAg levels. A negative sample tested immediately after a sample with an HBcrAg of 8.7 LogU/mL showed an HBcrAg of 2.4 LogU/mL, thus confirming carryover. The sample with an HBcrAg of 8.8 LogU/mL and collection tubes containing the negative samples were continuously opened to check for the effects of sample splashing and aerosols. The results showed that sample splashing and aerosols did not account for the carryover. The iTACT-HBcrAg is a highly sensitive assay; therefore, carryover can occur when magnetic particle-antigen complexes are introduced into the next sample via the BF wash nozzle. Any sample determined to be positive for HBcrAg after the testing of a sample with an HBcrAg above the measurement range should be retested for confirmation.

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