抄録
肝障害時のケトン体代謝,とくにそのglucose responseを追求する目的で急性四塩化炭素中毒ラット(肝障害群)および対照ラット(対照群)について実験的研究を行ない,下記の結果を得た.
1) 肝障害群では対照群と異なり,glucose負荷後においても肝α-glycerophosphateの増加が認められなかった.
2) 肝mitochondriaのoxaloacetate濃度はglucose負荷後,対照群で約3倍に増加したのに対し肝障害群では逆に減少した.
3) 肝β-hydroxybutyrate/acetoacetate比はglucose負荷後,対照群で著明に減少したのに対し,肝障害群では有意の変動を認めず,したがって肝障害群ではglucose負荷後も脂肪酸酸化速度の抑制は認められなかった.
4) 以上の結果より,glucose負荷後,肝acetyl-CoAおよび肝ケトン体は対照群で著明に減少したのに対し,肝障害群では軽度の減少にとどまった.