1977 年 18 巻 11 号 p. 864-868
黄疸及び胆のう内胆石の手術により,肝内結石症の診断がなされ,5年の経過後,続発性胆汁性肝硬変症と化膿性肝内胆道炎で死亡した一剖検例を報告した.患者は38歳,男性で,前記術後黄疸が断続的に持続し,死亡約2カ月前,黄疸増強,腹部膨満があり,入院した.入院後,副腎皮質ステロイド等の治療にも拘らず,意識レベルの低下と共に死の転帰をとった.剖検により,欠損を思わせた著明な肝左葉の萎縮,肝内結石等を認めた.肝左葉の胆管は分岐部付近の狭窄により,著しく拡張しており,胆石を容れ,左葉は線維性瘢痕組織に置き代っていた.同時に左葉へいく門脈枝の短縮と狭窄を認め,門脈枝は拡張した胆管と交叉し,内腔は圧迫され,硬化性狭窄,器質化血栓がみられた.肝左葉萎縮の原因として,胆道及び門脈枝の走行並びに狭窄拡張が重要な役割を果していると考えられた.