1977 年 18 巻 12 号 p. 943-949
肝におけるエタノールの代謝の律速段階に関係するミトコンドリアとミクロゾームのチトクロームの微量定量法を開発し,飲酒者肝の生検試料で分析をおこなった結果次のことが判明した.症例は62例で,飲酒者は31例であった.1)呼吸鎖チトクロームaa3は慢性肝炎,肝硬変,肝癌の順に低下したが,飲酒による有意な変化はみられなかった.2)MEOSに関係すると考えられるチトクロームP-450は慢性肝炎飲酒者で有意に増量していたが,肝硬変飲酒者では増量がみられなかった.またこの増量はdose-dependentではなかった.3)非飲酒者肝のP-450/b5比はほぼ一定であったが,飲酒者ではこの比が不定となりミクロゾーム膜の異常を示唆した.これらの変化なエタノール代謝と関連して者察した.