肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
塩化ビニール製造従業者にみられた門脈圧亢進症の1例
滝下 佳寛久野 梧郎螺良 英郎原田 邦彦永松 明男大塚 久
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 18 巻 12 号 p. 950-957

詳細
抄録

塩化ビニール・モノマーの暴露が関係していると思われる門脈圧亢進症の1例について報告する.
症例は38歳の男性で,18年9カ月間にわたり塩化ビニール製造作業に従事していたが,脾腫,食道および胃の静脈瘤を伴う門脈圧亢進症と診断され脾摘出術および食道離断術を受けた.術前の検査では血小板数の減少,ICGおよびBSPによる色素排泄能の障害が認められたが,GOT,GPT,およびアルカリフォスファターゼ値は正常であった.肝の組織学的検査では門脈域の線維化が著しく,小葉間におよぶ線維性の隔壁があり,類洞内皮細胞の僅かな増加がみられた.摘出脾では著明な慢性うっ血像を示し,脾洞の増生,髄索および血管周囲の線維化がみられた.患者は術後8カ月目に絞拒性腸閉塞で同部の切除術を受けたが,術後に腎不全および汎発性腹膜炎で死亡した.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top