1977 年 18 巻 8 号 p. 571-578
ヒト肝蛭症は稀な疾患で,本邦では本症例を含めて23例にすぎない.症例は,不規則な発熱,右季肋部痛を訴え,好酸球増多とICG異常,GOT,GPT,Al-Pase,LAPの軽度異常とγ-GlおよびIgG,IgM,IgEの増加をみとめ,腹腔鏡検査にて左葉に結節性隆起と被膜の緑紫色の変化をみとめ,肝生検像でeosinophilic granulomaの像をえた.また肝蛭抗原を用いた免疫学的検査にて肝蛭症を強く疑わしめたため,AMS III法による糞便検査で肝蛭の虫卵を発見,確診した.ビチオノールによる治療により好酸球増多も正常化し,第2回目の腹腔鏡検査では,結節性隆起や被膜の変色が改善消失していた.また肝組織像でもeosinophilic granulomaは消失し,線維化されていた.