肝臓
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東アフリカ・ケニアにおける鉄沈着症
肝を中心とした病理組織学的研究
寺尾 英夫
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1979 年 20 巻 5 号 p. 470-484

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抄録

経口的鉄過剰摂取が原因とされている南アフリカ・バンツー語族における鉄沈着症(Bantu siderosis)は鉄が人体に及ぼす影響をみる上で好個な材料として, Idiopathic hemochromatosisやTransfusional hemosiderosisと比較されつつ研究がなされている.著者は東アフリカ・ケニアにおけるバンツー語族の剖検例(74例)にも高頻度(46%)かつ強度の肝鉄沈着を見出したので病理形態学的に検討した.肝組織内鉄沈着のあり方は,同一原因(経口的鉄摂取)と推定されるにもかかわらず肝細胞,Kupffer細胞ともにさまざまである.小葉内分布は肝細胞内鉄沈着は周辺部にKupffer細胞内鉄沈着はび漫性である.鉄が肝線維症や肝硬変の原因となり得るか検討したが鉄の一義的肝障害性を示唆する成績は得られなかった.肝硬変におけるnodularhyperplasiaや異型性のある再生結節に鉄沈着は少なく,癌細胞では全く認められないことから増殖性病変の前癌性病変としての意義についても考察した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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