1980 年 21 巻 7 号 p. 883-889
生後49日の男児剖検例.生後5日頃から新生児高ビリルビン血症を認めたが,その後著変なく経過していた.生後28日,嘔吐と痙攣を主訴として入院,CT-scanで硬膜下血腫を指摘されたが,その後D.I.C.を合併し3週間の経過で永眠した.剖検で硬膜下血腫と脳内血腫を認めると同時に,肝は腫大し,その割面で,小葉中心部は緑色を呈していた.組織学的に肝は,小葉中心部の胆汁うっ滞と小葉中間帯から周辺部にかけて著明な多核巨細胞の出現を認めた.
これらの所見から,本症例では頭蓋内血腫の中で継続的な溶血がおこり,そのため過剰に産生されたビリルビンが肝細胞を障害して多核巨細胞化をひきおこし,結果としてこれら巨細胞が胆汁の流出障害をおこしたと推測された.
以上より,本症例はいわゆる“濃縮胆汁症候群”と考えられ,臨床経過とその発生機序について検討した.