肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
急性肝壊死で死亡した甲状腺機能亢進症の1例
三宅 周河野 宏荒木 文雄
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 24 巻 1 号 p. 62-68

詳細
抄録

甲状腺クリーゼ(クリーゼ)は一度発症するとしぼしば致死的であり,その発症の原因の1つとして肝障害説がある.我々は,著明な急性肝壊死で死亡した甲状腺機能亢進症(甲亢症)の1剖検例を経験したので報告する.
患者は71歳女性で,昭和52年に甲亢症をいわれるも放置.昭和57年1月3日に風邪気味にて薬をのみ,翌日早朝家人が起こすに返答なく,当院に緊急入院.入院時,意識混濁,黄疸,眼球突出,頻拍(142)等を認めた.検査上,白血球数増加,T3摂取率上昇,肝実質障害の所見があった.抗不整脈剤,ステロイドなどにかかわらず,約17時間後に死亡.剖検で甲亢症+急性肝壊死に一致する所見を認めた.甲亢症において,肝の脂肪変性,中心性および限局性壊死などがいわれているが,劇症肝炎に相当する著明な急性肝壊死の報告は見当たらない.黄疸を伴う甲亢症例はしばしばクリーゼに陥るので,その意味でも黄疸の有無は重要であると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top