肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
鉄染色による肝細胞癌の境界病変の検索
ヘモジデリン沈着抵抗性領域を中心として
中沼 安二太田 五六
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 25 巻 3 号 p. 393-399

詳細
抄録

ヘモジデリン沈着の著しい肝硬変の剖検肝7例の全割切片標本に鉄染色を行なったところ,4症例において,ヘモジデリン陰性の5結節(最大径1.0cm)がみられた.これら5結節中において,1. 2層以上の多層性を示す肝細胞が膨脹性に発育し,周囲のヘモジデリン陽性肝細胞との間に明瞭な境界があった.2. 周辺の再生結節と異なり,胞体の好塩基化,ロゼツタ形成,マロリー体含有細胞の密在,細胞明調化,脂肪沈着,胆汁栓が高率にみられた.これらはいずれも肝癌細胞の表現として知られており,そのいずれかをそなえた境界病変と考えられ,既に癌化の状態にあるものと考えた.他の1コのヘモジデリン陰性結節は良性の再生結節で,おそらく癌化に達していない境界病変であろうと推定した.以上,鉄染色は,肝癌あるいはその関連病変の検出に有用と考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top