肝臓
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肝癌におけるB型肝炎ウイルスDNAの組み込み
今関 文夫小俣 政男横須賀 収奥田 邦雄
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1985 年 26 巻 11 号 p. 1508-1513

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抄録

34例の肝癌組織を,32P標識HBV (Hepatitis B virus)DNAプローベを用い,サザンブロット・ハイブリダイゼーション法により,HBV DNAの組み込みの有無を検索した.血清HBsAg陽性例は,9例中全例(100%)に癌部へのHBV DNAの組み込みが認められたが,HBsAg陰性例は25例中3例(12%)であった.癌部に組み込みの認められた12例中,その非癌部にも組み込みのみられたのは,11例中5例で,癌部と組み込みの様式が異なるのは2例であった.又,2例に肝内に多発性の転移巣がみられ,数カ所について検索したが,すべて同一の様式であった.
HBsAg陽性肝癌には,高率にHBV DNAの組み込みがみられ,肝発癌とHBVの強い因果関係が推察された.一方,HBsAg陰性肝癌では,12%と低率であったが,従来非Bと考えられていた肝癌にも,HBVの肝発癌への関与が示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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