肝臓
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B型肝炎ウイルスキャリアからの急性発症の臨床病理学的検討
村山 英行
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1988 年 29 巻 8 号 p. 1001-1012

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抄録

HBVキャリアからの急性発症(急性発症)の臨床病理学的特徴を明らかにする目的で,急性発症34例を対象に急性ウイルス肝炎(AVH)119例(A型30例,B型34例,非A非B型55例)と比較検討した.その結果,急性発症例の臨床症状はAVHに比し概して軽いものが多く,検査値ではT・Bil, GOT, GPT, Al-P,γ-GTPは低かったが,TTT, ZTTはB型,非A非B型に比し高い傾向にあった.一方,組織学的には,急性発症例はAVH様の実質障害を示したがKupffer細胞の腫大が軽度で,門脈域や門脈域周囲の炎症反応が強い傾向を有していた.さらに,HBVの組織内局在を酵素抗体法を用い検討したが,肝組織内HBs抗原は31例中26例,HBc抗原は22例で陽性であり,両抗原とも細胞質型あるいは混合型を呈していた.また,急性発症後短期間にseroconversionを起こした10例では,実質障害が強く,細胞質型HBc抗原のみ陽性を示し,核型を示すものは少ない傾向にあった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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