1988 年 29 巻 8 号 p. 1078-1086
肝細胞癌切除例53例のパラフィン包埋腫瘍組織を用い,フローサイトメトリーにより,腫瘍核DNAヒストグラムを作製した.これよりDNA indexを求め,臨床病理学的検討を行なった.
その結果,DNA indexが1.0以外の,aneupleid patternを示した症例の3年生存率は,diploid patternの95.2%に比較し,43.3%と不良であった.また,aneuploidの症例の血清AFP値は2,887.7±1,885.4ng/mlでdipleid症例の1,065.3±325.0ng/mlに比べ有意の高値であった.細胞異型度では差を認めなかったが,被膜浸潤,脈管侵襲はaneuploidのものに高率の傾向を認めた.再切除例10例の中,再度発癌と考えられた症例で,初回切除腫瘍のDNA indexとは異なっていた.しかし,断端再発例では同値であった.DNA indexの解析は,肝細胞癌の生物学的特性の解明,特に予後判定に有用であった.