1988 年 29 巻 8 号 p. 1068-1077
同一肝から肝細胞とKupffer細胞(Kc)を分離し,それらの肝再生時の細胞動態の変化をFlow cytometry (FCM)を用いて解析した.ラット肝実質細胞は生直後から8週にかけてpolyploidizationが認められ,再生肝の細胞動態の解析は,加齢に伴うpolyploidizationの影響の少ないploidyの安定した週齢の動物を用いる必要があった.再生肝の肝実質細胞の細胞周期上の変化は,肝切除後24時間後にS・G2M期の比率の増加のピークが認められたが,一週間後には肝切除前値に復した.また,2核細胞の割合は肝再生過程で減少したが,2核8C細胞の減少が2核4C細胞より顕著で,肝再生時の2該細胞の細胞動態変化が注目された.同時に分離したKcは,実質細胞より24時間遅れ肝切除後48時間でS.G2M期の比率の増加のピークが認められた.本法により,同一肝より分離した再生肝実質細胞,Kcの細胞動態の解析が容易になり,肝再生時の実質,非実質個々の細胞およびこれら細胞の細胞動態,機能との関連性を究明し得る一方法が確立された.